9月19日からNetflixで配信が始まった「極悪女王」が話題沸騰中です。特に、ゆりやんレトリィバァさんがダンプ松本役を見事に演じ、そのリアルな再現が視聴者の心を掴んでいますよね。
この作品は、1980年代のプロレスブームとその背景を生々しく描写しており、多くのファンを惹きつけています。
ダンプ松本さん(出典:ダンプ松本公式ブログ)
今回は、その80年代の女子プロレスを象徴する「クラッシュギャルズ」と、そのライバル「極悪同盟」を盛り上げた重要人物、悪徳レフリー・阿部四郎さんにスポットを当てます。
リング上では「悪徳レフリー」「極悪レフリー」として憎まれ、女子プロレスファンから激しいブーイングを浴びながらも、一躍時の人となった阿部四郎さん。
阿部四郎レフェリーがなぜ「悪徳・極悪レフェリー」となったのか、その裏に秘められた人柄についても探っていきます。
阿部四郎レフリーはどんな人?
阿部四郎さんは、「悪徳レフェリー」「極悪レフェリー」として知られ、全日本女子プロレスで活躍しました。特に1980年代には、ヒール軍団「極悪同盟」に肩入れしたレフェリングで名を馳せました。
阿部四郎極悪レフリー(本人)
(出典:aucfan)
試合中、阿部レフリーは反則行為を見逃したり、「高速カウント」と称される特定の選手に有利な判定を下すなど、非常に偏ったレフェリングを行いました。
その結果、ファンからは憎まれつつも、試合を盛り上げる重要な存在として欠かせない存在となりました。
阿部四郎さんは2017年に76歳で肺炎のため亡くなりましたが、その影響力は今もなお語り継がれています。
「極悪レフリー」とは?
阿部四郎さんは、全日本女子プロレスの悪徳レフリーとして、80年代の女子プロレスブームを盛り上げた中心的な存在でした。
特に、クラッシュギャルズとの抗争を繰り広げたダンプ松本率いる「極悪同盟」に極度に肩入れし、反則を黙認する偏ったレフェリングを展開しました。
左:ダンプ松本
右:阿部四郎悪徳レフェリー
(出典:週刊ファイト)
ファンを惑わせる演出
阿部四郎レフェリーは極悪同盟と共に登場し、中立であるべきレフェリーが特定のチームに加担する姿を演出しました。
この結果、ファンの間には「癒着しているのでは?」という疑念が生まれ、試合にさらなる緊張感が加わりました。
凶器攻撃の黙認
本来ならば反則となるはずの凶器攻撃を、阿部四郎レフェリーは黙認しました。
このため、ダンプ松本が竹刀での攻撃を自由に行うことができ、その姿はファンの間で強烈に印象に残りました。
「ダンプ=竹刀」というイメージが確立されたのも、阿部四郎レフェリーのこの対応が大きかったと言えるでしょう。
高速カウント
極悪同盟がフォールを狙った際、阿部レフリーは通常のカウントよりも速くスリーカウントを行い、極悪同盟を勝利に導くことがありました。
この不公平な「高速カウント」が、ファンをさらにヒートアップさせ、プロレス全体を盛り上げました。
実はいい人? 阿部四郎レフリーの素顔
リング上では「悪徳レフリー」として知られていた阿部四郎さんですが、実際の性格は非常に温厚で親しみやすい人物だったと言われています。
特にダンプ松本さんやブル中野さんからは「優しくて人柄が最高だった」と絶賛されています。
ダンプ松本さんは自身のブログで、阿部レフリーが脳梗塞で入院していたことを明かし、
「阿部ちゃん、早いよ。身体に気を付けて極悪を頑張って続けようなって言ってたのに。ありがとう、阿部ちゃん。ご冥福をお祈り申し上げます」
と故人をしのんでいます。
阿部四郎フィギュア。このようなおもちゃが販売されることでも、阿部レフリーの人望の厚さが伺えます。(出典:suruga-ya)
ブル中野さんは、阿部レフリーについて
「プロモーターとしても活躍され、裏表を区切っていた。裏では本当に優しい方だった」
と振り返っています。彼女の新人時代には、年賀状のお返しとしてお年玉に1万円をもらったエピソードがあり、これが阿部四郎さんの温かさを象徴しています。また、ブル中野さんの小料理屋を定期的に訪れ、しその焼酎を楽しんでいたそうです。
阿部レフリーさんが亡くなった際、長与千種さんは
「空を何度も見上げたよ阿部ちゃん。寂しいよ」
と自身のブログで綴っており、また「同じ時代を生きた方で、言葉にできません…」と語っています。
このように、リング上では憎まれ役を演じていた阿部四郎さんですが、実際には非常に心優しい人物であったことが伝わります。
なぜダンプ松本の味方をしていたのか?
阿部四郎レフェリーは、ダンプ松本のことを心から気にかけていたようです。
「俺はダンプ松本がかわいそうで仕方がなかった。彼女は一生懸命レスラーになろうと頑張っていたが、向いていないと言われて1年間営業に回され、ずっと宣伝カーに乗っていた。
それでも耐え続け、何とか彼女を売り出してやりたいと思った。あの顔と体型だから、いっそのこと悪役に徹するのはどうかとも考えた。
まぁ、ついでに俺もバックアップしようと。プロレスをやりたいなら、善玉だけじゃなくて、とことんワルになる手もあるさ。」( 週刊平凡パンチ 1985年6月10日号より)
宣伝カーで営業中のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)と阿部四郎(音尾 琢真 おとお たくま)さん。阿部四郎さんは凄腕のプロモーターでもありました。(出典:Netflix)
しかし、阿部四郎さんの「極悪レフェリー」としての振る舞いは、クラッシュギャルズやそのファンから激しい怒りを買うことになります。
こちら、実際の宣伝カー。
右:デビュー前のダンプ松本さん
左:デビル雅美さん(出典:東スポWEB)
デビュー前のこのダンプ松本さん、ゆりやんレトリィバァにそっくり!
リング上で阿部悪徳レフリーは、極悪同盟の反則行為を黙認し、クラッシュギャルズが極悪同盟に攻撃されると、見て見ぬふりをする一方で、極悪同盟がピンチになると体を張ってクラッシュギャルズの攻撃を阻止するのです。
このような公然とした偏りは、クラッシュギャルズの2人、長与千種とライオネス飛鳥を激怒させました。
「こんなやつ、大ッ嫌い! バカヤロー、卑怯モンめ!」(長与千種)
「こんちくしょう! 本当に殴り殺してやりたい!!」(ライオネス飛鳥)
この偏ったレフェリングによってヒール軍団がより悪くずる賢く映り、ベビーフェイスであったクラッシュギャルズの人気は加速しました。
阿部四郎レフリーは、プロレスが興行であることを理解し、観客に受けるアプローチを熟知したプロの興行師でした。
「俺がやられるから会場がワクんだよ」と言わんばかりに、クラッシュ・ギャルズの怒りの仕返しを受け、殴られ、蹴られ、血みどろになることも日常茶飯事でした。
阿部四郎レフェリーの追悼イベント
「女子プロレス『極悪まつり』~あばよ!阿部四郎 in OSAKA」は、2017年11月23日に大阪のアゼリア大正で開催されました。
この大会は阿部四郎さんの追悼興行として行われ、多くのファンが集まりました。
「女子プロレス『極悪まつり』~あばよ!阿部四郎 in OSAKA」ポスター
(出典:ダンプ松本公式ブログ)
イベントでは、ダンプ松本やZAPなどのレジェンド選手が参加し、さまざまな試合が行われました。
特に注目されたのは、ダンプ松本とZAPにKAORUが加わった「超世代極悪同盟」と、ジャンボ堀、大森ゆかり、フェアリー日本橋のトリオによるメインイベントでした。
新旧の女子プロレスの名選手たちが一堂に会し、非常に盛り上がったイベントとなりました。
レスラー選手ならまだしも、レフリーの追悼の試合が行われたなんて!
追悼の試合が行われるほど、阿部四郎さんがいかに愛されていたかがよくわかるわね
まとめ
悪役レフリーとして名を馳せた阿部四郎さんは全日本女子プロレスで活躍し、特に1980年代にはヒール軍団「極悪同盟」への極端な肩入れで有名でした。
彼は「悪徳レフリー」として、ダンプ松本率いる極悪同盟の試合で不公平なレフェリングを行い、反則行為を見逃したり、「高速カウント」など特定の選手に有利な判定を下すことで観客を熱狂させました。
めちゃイケの「伝説の悪徳レフェリー岡村四郎」こと岡村隆史。あまりにも阿部四郎さんのレフェリングが極悪すぎて、岡村隆史さんがめちゃイケでマネするほどでした(画像:Amazon)
このような演出は、試合にドラマ性を持たせ、観客に強い感情を抱かせるためのものでした。阿部さんのレフェリングスタイルは、プロレスのエンターテインメント性を高めるために非常に重要な役割を果たしていました。
阿部四郎さんはレフリーであると同時にプロの興行師でも
あったんだ
阿部四郎さんの「実はいい人」エピソードとしては、ダンプ松本さんに常に気をかけ、彼女が辛い時期を乗り越えるために支えようとしたことが挙げられます。
年賀状のお返しにお年玉を贈るなど、彼の優しさが感じられるエピソードも多く、他のレスラーからも愛されていました。
ダンプ松本を味方した理由は、彼女が一生懸命レスラーになりたくて頑張っていたからです。
向いていないとされ、営業に回される中で耐え続ける姿を見て、阿部さんはダンプ松本を売り出すために悪役に徹することを提案しました。
このように、阿部四郎さんの行動は彼の心優しい一面を如実に示しています。
阿部四郎役の音尾琢真(おとお たくま)さん(出典:Netflix)
ダンプ松本さんがレスラーとして成功するために、阿部さんは彼女をサポートし、悪役としてのキャラクターを確立する手助けをしました。
自ら進んで悪役を演じることで、ダンプ松本さんのキャリアを後押ししたのです。
悪役に徹することで、ダンプ松本が実家に石を投げられていたように、阿部さんはお孫さんが学校でイジメられていたんだって。
阿部四郎さんのこうした行動は、プロレス界において非常に重要な役割を果たし、多くのファンや選手たちに愛される存在となりました。
小太り体型な若い頃の阿部四郎・悪徳レフリー。この頃には既に糖尿病を患っていたようです(画像:東スポWEB)
今回は、Netflixドラマ「極悪女王」に焦点を当て、悪役レフリーと称された阿部四郎さんの経歴や「悪徳レフリー」としての役割、彼がダンプ松本に肩入れした理由についてお伝えしました。
Netflix配信中の「極悪女王」と併せて楽しんでいただければ幸いです。最後までお読みくださりありがとうございました。
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